ちゃぷん、と水音が響く。乳白色のお湯とサクラの香りの漂うバスタブの中、航太はふう、と息を吐いた。
「ん? どした?」
その後、航太が泥のような深い眠りから目を覚ました頃には、もう既に日は西に傾きかけていた。
「……はぁ……」
だるく重い体を無理矢理起き上がらせ、航太はベッドを下りた。行為の最中に意識を手放してしまった航太だが、その身体は清潔にされた上、愛用のシルクのパジャマに包まれていた。
「……ん……、腰痛い……」
身体中が悲鳴をあげている。それもそのはず。ベッドで航太の手首を縛ったままの行為の後、バスルームで汚れを落とすつもりがそこでも一戦交え、またベッドに逆戻りしてしまった。航太が意識を飛ばしてそのまま眠りについてしまったのは、実際何度目の時だったのかすら覚えてはいない。それほど激しく、しかし甘い夜だった。
「お、おはよ」
航太がリビングに顔を出すと、ソファーでは肇が煙草を吸っていた。その顔には満面の笑み。疲れを感じさせる様子はなく、それどころかやけに生き生きした表情で航太を見つめている。
「……めちゃくちゃ腰痛いんだけど……」
自分の疲労の度合いに反比例した肇の様子に航太は唇をとがらせる。納得がいかない。すねている愛しい恋人を見て肇はやさしく微笑むと、その手を広げた。
「おいで」
航太は重い身体を引きずって肇の傍まで歩み寄ると、彼の胸に飛び込むようにソファーに崩れ落ちた。腕の中の航太をやさしく抱きしめ、その髪を撫でる肇。
「……手首も痛い……」
「ごめんって。後で薬塗ってやるから」
「もう、絶対やだからね! 今度あんな事したらっ……」
航太が早口でまくしたてながら顔を上げると、そこにはえもいわれぬやさしい表情で自分を見下ろしている肇がいる。
「あんな事したら?」
「……とにかく、もう絶対にするなよ!」
「はいはい。……でもさ、いつもより感じなかった? お前、すげぇいい声で啼いてたし、めちゃくちゃ乱れてた」
「――っ! 肇っ!!」
真っ赤になって怒る航太を見て、肇はからからと高笑いした。また肇の胸に顔を埋め、航太はぽつりとつぶやいた。
「……性格悪い」
「そんなのに惚れたお前が悪い」
「…………もういい……」
こういう時の肇に口で敵う訳がないのを、航太は何度も経験して知っている。しかし、こんな些細なやりとりさえも幸せだと感じる。こうして側にいて、彼のぬくもりを肌で感じられる事が、今の航太にとっての最高の安らぎである。航太は静かに目を閉じた。
「……航太?」
「……だるいし、まだ眠い……」
「いいよ、寝てろ」
腕の中で笑う航太。無防備な表情を見せるその額に優しくキスを落として、肇も心の安らぎを感じていた。
「……こういうのを幸せって言うのかもな」
「……うん」
暖かい午後の日差しが差し込むリビングのソファーで微睡みながら、二人は幸せをかみしめていた。
さて後日、航太の手首の微かな痣のような痕を目ざとく見つけた梨花が、七緒と一緒に妄想を膨らませたというのはまた別の話…………。
ああ、やっと出来た……。てか、4月7日過ぎたぞ、8日だぞ! ま、実質日付変わってますからって、げふんげふんげふ……。まあ、松永初の18禁ですが、まだまだヌルイっすよ。てか、これでもUPするには相当の勇気がいるんですけど……(汗)。まあ、あとはおいおいね。
それから、新宿中央公園の描写はほぼ嘘です……(汗)。昔一度だけ通った事はありますが、ロケハンしてないので捏造です。まあ、NETでちょこっと調べたので、桜はちゃんとありますが。
BGMはもちろん風味堂。表versionに引き続き、『世界一甘いキスを交わしたら』がメインテーマになりました。歌詞が超大好きで、二人にぴったりハマってて、ぜひ載せたいのですが、そこはホレ著作権があるので残念ながら……。てか、この歌詞でこの話を書いてしまう俺ってどんだけ腐ってるんだ、ってつくづく思いました……(^_^;) ああ、渡君ごめんなさひ……m(_ _)m
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